この世界の記録
物語の前に、あるいは読みながら。
この世界で語られていることを、ここに。
伝承
一夜で滅んだ都市
むかし、ひとつの都市があった。
その門をくぐったのは、
たったひとりのコルヴァ族だったという。
夜が明けたとき、
その都市に人の声は残っていなかった。
以来、人々はコルヴァ族を悪魔と呼び、
その名を口にすることさえ忌んでいる。
コルヴァ族
触れたものを、変えてしまう一族
触れることの呪い
コルヴァ族の肌に触れた者は、やがて人の形を失う。その感染力は、ひとつの都市を一晩で滅ぼすほどに強い。
とりわけ危ういのは顔だ。手の皮膚よりも、顔の肌、唇、涙。粘膜が触れたとき、変化は一瞬のうちに進むとされる。
沈黙の誓い
コルヴァ族は、自らの存在が他者を壊すことを生まれながらに知っている。
だから彼らは、顔を包帯や仮面で縛り上げ、言葉を捨てて生きる。世界に害をなさないための、悲しい誓いである。
フカ
発貌、人の形を失っていく三つの段階
コルヴァ族に触れられた者は、三つの段階を経て変わり果てていく。この過程を「発貌」と呼ぶ。
潜伏期
接触直後から数時間
触れられた場所が異常な熱を帯び、肉がうずく。意識はまだはっきりしているが、言葉が少しずつ崩れはじめる。
わたしは、まだ、わたし縺ァ縺吶?縲ゅ≠
芽胞期
十二時間から数日
肌から無数の目玉や爪が芽吹き、原型を失っていく。意識は残っているが、身体はもう言うことをきかない。激しい苦痛のなかで狂乱する。
凶暴期
完全変異
人としての理性は消え去る。生肉と温かな血を求め、周囲の人間を見境なく殺める。
賞金札
街角に貼られた布告
布告
コルヴァ族を
見た者は届け出よ
通報、または確保に至った者には
聖金貨をもって報いる
一生を遊び暮らすに足る
検者
コルヴァ族を探し出すため、街や村を巡回する役人。コルヴァ族特有の甘い腐敗臭や気配を嗅ぎ分ける、特別な探知犬を連れている。
聖火
白銀の炎による浄化
変わり果てた者の肉片や体液は、死してなお、土や水に触れれば周囲を汚していく。
そのため役人は、専用の油と白銀の炎を用いて、骨も残さず焼き尽くす。炭になるまで焼かねば、感染は止まらない。
ワクチン
新しい報せ
近年のこと
フカを予防するとされるワクチンが開発された。
用語集
読みながら迷ったときに
コルヴァ族
触れた者を変容させる一族。顔を包帯や仮面で覆い、言葉を捨てて生きる。
フカ
コルヴァ族に触れられ、人の形を失った者。
発貌
人がフカへと変わり果てていく過程。潜伏期、芽胞期、凶暴期の三段階をたどる。
沈黙の誓い
他者を壊さぬよう、コルヴァ族が顔を縛り、言葉を捨てる誓い。
検者
コルヴァ族を探して巡回する役人。探知犬を連れている。
賞金札
コルヴァ族の通報・確保に懸けられた賞金の布告。
聖金貨
賞金札の報酬として支払われる金貨。
聖火
変わり果てた者を焼き尽くす白銀の炎。専用の油とともに用いられる。